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オートサンプラーバイアル技術資料 ~選択方法とトラブル解決法~

種類別による違い、セプタムやキャップの解説

HPLCやGCで使用されるオートサンプラー用のバイアル/セプタム/キャップは、形・容量・材質・色などによって様々な種類が存在し、最適なものを選び出すことは困難です。
本ページでは、種類による違いと選び方について解説します。

 

バイアルの選び方

01.バイアルネックの種類を選ぶ

オートサンプラーバイアルは、ネックの形状によってスクリュータイプ(ねじ口タイプ)、クリンプタイプ(圧着タイプ)、スナップタイプ(簡易圧着タイプ)の3種類が存在します。
3つのタイプを選ぶ際に重要なポイントは、「シール性(気密性)」と「キャップの閉めやすさ」の2つです。

シール性はクリンプタイプ>スクリュータイプ>スナップタイプの順に高くなります。
一方、キャップの閉めやすさはスナップタイプ>スクリュータイプ>クリンプタイプとなります。
シール性に問題がない範囲でキャップの閉めやすさを考慮して、バイアルのネックを選ぶことが重要です。

スクリュータイプはクリンプタイプに比べてシール性はやや劣りますが、工具を必要とせずに必要十分なシール性が得られるため、最も一般的に使用されます。
スクリュータイプの中にはShort Thread バイアル(9-425)と呼ばれるネックのスレッド(ねじ)が短いタイプがあり、通常の半分の回転数でキャップを締めることができるため作業時間を短縮することができます。
また、Short Thread バイアル にはSureStopと呼ばれる締めすぎ防止機能を持つ製品もあります。

クリンプタイプは最もシール性が高いですが、専用の締め付け器具であるクリンパーが必要で手間がかかります。そのため、高揮発性化合物などの特にシール性に特に注意が必要な場合に使用されます。

スナップタイプは、他のネックと比べてシール性は劣りますが、ワンタッチで押し込むことで手締めできるため、作業効率が要求される場合などに有効です。


  キャップ シール性 閉めやすさ 説明
スクリュー
キャップ
キャップで締めることで、バイアルの口とセプタムが密着してシールします。
8mm径のセプタムを使用する標準バイアル(8-425)と10mm径のセプタムを使用する広口バイアル(10-425)、9mm径のセプタムを使用するShort Threadバイアル(9-425)があります。
クリンプ
キャップ
アルミ製キャップと一緒にセプタムをバイアルにかぶせて、専用工具(クリンパー)で締め付けることでアルミ製キャップが変形してシールします。
主に高揮発性化合物のGC分析やヘッドスペース等のシール性が求められる場合に使用するバイアル・キャップです。
スナップ
キャップ
樹脂製キャップの内側にツメがあり、キャップを押し込むことでバイアルネックのフランジ部にツメが引っ掛かることでシールします。
工具を必要とせず、ワンタッチで装着できます。
シール性が劣るため、ヘッドスペース等の加圧になるサンプルには不向きです。

ヘッドスペースバイアルについて

バイアルネックとバイアルボトムの説明の画像

 

02.バイアルの容量を選ぶ

HPLCやGCのオートサンプラーに使用するバイアルの容量は一般的に1.5mLまたは2mLです。
ただし、この容量の違いはメーカーの表記上の違いであり、外寸には差がありません。
表示容量の違いは推奨容量表示(1.5mL)か、総容量表示(2mL)の違いで、推奨容量は総容量の7~8割程度となります。
推奨容量以下でも使用することは可能ですが、容量が少なすぎるとオートサンプラーのニードルからサンプルを十分に吸い上げることができず、再現性が低下する場合があります。
そのような場合には、後述するインサートを使用します。

 容量 説明 
1.5 mLおよび2 mLのサイズは共通で、
外寸は12×32(11.6×32)mmです。
ブランドによって容量の表記が異なります。
1.5 mL未満 インサートやインサート入りバイアルがあります。少量のサンプルを使用する際に最適です。
1.5 mL、
2 mL
バイアルの取扱いで一番多いラインアップです。
4 mL 試料用バイアルとして使用する他に、洗浄溶液、廃液用としても使用可能です。
10 mL 以上 ヘッドスペース用バイアルです。
主に 10 mL、20 mL をラインアップし ています。

インサート
インサートは、サンプル量が少なくてオートサンプラーで吸引できる液面の高さを確保できない場合に有効です。インサートとバイアルを組み合わせることで、容量変更や、接液部の材質変更が容易にできます。

小容量バイアル
微量サンプルに対応したバイアルとして、インサートが固定されたインサートバイアルや、底面がすり鉢状になった濃縮用バイアル、特殊な形状で微量サンプルに対応したハイリカバリーバイアルなどがあります。
インサートを使用するとバイアルの口径が狭くなるため、サンプルの出し入れがやや困難になる場合がありますが、濃縮用バイアルやハイリカバリーバイアルは口径が大きく、サンプルの出し入れが容易です。

03.バイアルの材質を選ぶ

バイアルの材質を選ぶにあたって重要なポイントは、バイアル基材へのサンプル成分の吸着が少ないことと、バイアル基材からの妨害成分の溶出が少ないことです。
まずは高い不活性度(吸着の起こりにくさ)と耐溶媒性を持つ比較的安価なガラス(ホウケイ酸ガラス)を選択してください。この材質はほとんどの化合物の測定に適しています。ただし、ガラスの表面にはシラノール基(—Si-OH)が存在し、塩基性化合物などが吸着する可能性があります。
吸着が起こるとクロマトグラムのピーク面積に減少が見られます。この場合、ガラス表面を不活性処理したバイアルや高品質なガラス、または樹脂製のバイアル(PPおよびTPX)を選択してください。樹脂製のバイアルはガラスに比べて耐溶媒性が劣るため、GC分析用としては使用できませんのでご注意ください。

 
材質 説明
ガラス
(ホウケイ酸ガラス)
最も汎用的に使用されているバイアルの素材で、低アルカリ溶出、高い不活性度と耐 加水分解性に優れたホウケイ酸ガラスから作られています。ほとんどの化合物の測定に適しています。
不活性ガラス サンプルの吸着を防ぐためにガラス表面に不活性処理を施した製品です。
ガラス表面 には活性点となるシラノール基が残存しており、これを不活化することでガラス表面への化合物の吸着が低減されます。
高品質ガラス 厳格な製造条件の下で表面を保護する最適温度で製造された製品です。アルカリ含有量が低く pH シフトが極めて小さくなっています。
また表面活性が最小限に抑えられているため、吸着しやすい化合物の微量分析も可能です。
ポリプロピレン
(PP)
ガラスに対して反応性や吸着性を持つ試料に使用します。
塩基性化合物や生体サンプル、 イオンクロマトグラフィー、PFAS 分析などに適しています。廃棄の際に焼却できるメリットもあります。
高純度ポリプロピレン
(PP)
超高純度のポリプロピレンを材料としたバイアルのため、ポリプロピレンバイアルよりも更に低ブランクです。LC/MS/MS分析などの高感度分析にも使用可能です。
ポリメチルペンテン
(TPX)
ガラスに対して反応性や吸着性を持つ試料に使用します。
また、ガラスと同様の優れた透明性を持ちます。

樹脂製バイアルには分析前の液体サンプルから微粒子などを取り除き、そのままオートサンプラーにセット可能な「フィルターバイアル」などもあります。詳しくは下記リンクをご参照ください。

04.バイアルの色を選ぶ

透明・褐色の 2 種類ご用意があります。
光により変性や劣化が起きやすい溶媒やサンプルをご使用の場合は、褐色を選択してください。
また、成分名などのメモを記入できるラベル付きの製品もございます。

セプタムの選び方

セプタムはキャップと組み合わせて使用するゴム状のシートで、サンプルを外気から遮断するために使用します。ニードルをセプタムに刺してサンプルを吸い上げるため、柔軟性と耐薬品性が求められます。
いろいろな材質のセプタムがありますが、使用する溶媒やサンプルの種類によって使い分けが必要です。
PTFE/シリコンが最も汎用的に使用されます。

セプタムの材質を選ぶ

材質 セプタム 説明
PTFE/ シリコン 最も汎用性の高いセプタムです。化学的にも安定しており、ラバーと比較して低いブリードを示すため微量分析に適しています。また、オートサンプラーのニードルの使用に適した硬さで、再シール性も高く、ほとんどの HPLC や LC/MS および GC、GC/MS 分析 に使用できます。
PTFE/ シリコン
/PTFE
シリコンの両面に PTFE がラミネートされており、耐薬品性に優れています。 溶解性の高い有機溶媒の影響を抑える場合に使用します。
PTFE/ 赤ラバー
(合成ラバー)
GC、HPLC 用 低コストのセプタムです。FID、TCD、FPD 検出器を搭載した GC やUV/Vis または RI 検出器を搭載した HPLC に使用できます。
TEF/ 天然ラバー GC のルーチン分析向きの低コストなセプタムです。TEF で形成された保護層が破損するとゴムが化学薬品と接触するため、繰り返しの注入には適しません。
PTFE シリコンやラバーが使用できないサンプルに適しています。
再シールすることができないため、繰り返しの注入には適しません。
アルミニウム フタル酸エステル分析など、樹脂製のセプタムが適さないサンプルに使用できます。繰り返しの注入には適しません。

バイアルでよくあるトラブル及び解決法

セプタムがバイアルビンの中に落下する

HPLCのオートサンプラーニードルはGCと比べて太いため、セプタムを貫通せずにセプタムがバイアル内に押し込まれる場合があります。
この問題の主な原因はニードルの劣化やキャップの不適切な締め付けなどですが、セプタムやキャップを変更することで解決できる場合があります。


解決法1:スリットセプタム、プレカットセプタムの使用
スリットセプタムやプレカットセプタム(Yスリット)は、あらかじめ切り込みの入ったセプタムです。
これにより、ニードル貫通時の力が分散され、セプタムの落下が防止されます。
プレカットセプタムのサンプル接触面はPTFE材質であり、通常のPTFE/シリコンセプタムと同等の耐薬品性を持ちます。

 
解決法2:圧着型キャップの使用
圧着型キャップは、化学薬品を使用せずにキャップとセプタムが接着されたキャップです。
非常に太い針でもセプタムを貫通することができ、セプタムがバイアル内に押し込まれることはありません。
ただし、比較的高価であり、セプタムの選択肢が限られる(PTFE/シリコンのみ)という欠点もあります。

 
解決法3:AVCS(Advanced Vial Closure System)キャップの使用
AVCSはAdvanced Vial Closure Systemの略称で、セプタムの落下を防止する特殊なキャップシステムです。
このシステムはキャップの形状を工夫することでセプタムの落下を防ぎます。AVCSは安価であり、セプタムの種類に制約がありません。SureSTARTやLa-Pha-Packの9mm径キャップ(9-425)に使用されています。
さらに、SureStopバイアルと組み合わせることでキャップの締め付けが一定になり、セプタムの落下防止効果が高まります。

1. ニードルガイドリム
2. セプタム脱落防止
3. セプタム
4. 9 mm セプタム用バイアル
5. SureStop フランジ


注入量の再現性が悪い 

HPLCやGC分析において、注入量の再現性が得られない場合があります。この問題はオートサンプラーが原因であることが多いですが、バイアルそのものも原因となることがあります。


解決法1:スリットセプタムの使用
HPLC分析において、注入量が多い場合にバイアル内部が陰圧になり、注入の再現性が低下することがあります。スリット入りのセプタムを使用することで、バイアル内部の陰圧を防止し、注入の再現性を改善することができます。
また、ニードルにセプタムの破片が詰まることにより再現性が低下する場合もあります。
スリットセプタムはニードルが貫通しやすく、ニードルの詰まりを防ぐ効果もあります。

解決法2:インサートバイアルの使用
多くのオートサンプラーは初期設定ではバイアルの底面から約5mmの高さでサンプルを吸引します。サンプル量が少ない場合、正確にサンプルを吸引できない可能性があります。
そのため、インサートバイアルなどを使用して液面が底面から5mm以上の高さになるよう調整することが重要です。これにより、サンプルの吸引量を適切に制御することができます。

バイアル由来のゴーストピークが検出される

ゴーストピークは、クロマトグラム上に現れるサンプルに含まれない正体不明のピークのことで、その原因特定は非常に困難です。
それが溶媒やサンプル由来なのか、それともオートサンプラーのキャリーオーバーなのか、検討すべき要素はさまざまです。その中にはバイアル自体が原因となる場合もあります。
バイアルの製造工程では、有機物は高温にさらされることでほとんどが分解されます。
ただし、製造工程やその後の取り扱い、保管方法、不適切な梱包材料の選択などにより、化学物質に汚染される可能性があり、ゴーストピークの原因となることがあります。


解決法1:品質管理のしっかりしたメーカー製品を使用
バイアルの品質は外観だけでは判断できないことがあります。
そのため、品質管理が徹底されたメーカー製品の使用をお勧めします。
例えば、サーモサイエンティフィック社の「SureSTART」「La-Pha-Pack」といったブランドは、すべてのバイアルをクリーンルーム内で梱包しています。
梱包に使用される材料は、バイアルの汚染を防ぐために選定され、異物混入防止のため加工装置のほぼすべてがカバーで覆われています。

バイアル製造装置の写真

バイアル製造装置

キャップ製造装置の写真

キャップ製造装置

自動パッケージング装置の写真

自動パッケージング装置

 
解決法2:認証付きバイアルキットを使用
貴重なサンプルを無駄にしないためには、製造工程と梱包過程を厳密に管理し、コンタミネーションを徹底的に管理したバイアルキットを使用することが重要です。
例えば、「SureSTART」では、使用用途に合わせたさまざまな認証付きキットを提供しています。

1.仕様認証付きキット
仕様認証付きキットはバイアルの物理的なパラメーター(バイアルの寸法や底の厚さ、ネジ規格など)の仕様を
満たすことが保証されているバイアルキットで、日常的な分析に最適です。

2.LC/GC認証付きキット
LCやGC用の認証付きバイアルキットです。
バイアルとキャップの技術的問題や性能上の問題を防ぐために、LC-UVを使用して検査が行われ、最大15項目の重要な物理的仕様について認証されています。 

3.MSCERT認証付きキット
ルーチン質量分析用の認証付き高性能バイアルキットです。
最大15項目の重要な物理的仕様についての検査と認証が行われており、LC/MSおよびGC/MSを使用して低バックグラウンドの検査も実施済みです。
これにより、最も難しく繊細なアプリケーションに最適なバイアルキットとなっています。

4.MSCERT+認証付きキット
MSCERT認証付きキットより、さらに安全レベルを向上させた質量分析(研究アプリケーション)用の認証付きバイアルキットです。
事前洗浄された唯一のクロマトグラフィー用バイアルで、バイアル内のイオン含有量と粒子レベルが最小限に抑制されており、サンプルの完全性が保護されます。

微量分析の際にサンプルが吸着する

HPLCやGCの定量結果において、100%の回収率が得られないことはよくあります。
その原因は様々ですが、バイアルへの吸着もその一つです。


バイアルへの吸着メカニズム
ガラスの表面には、塩基性化合物を吸着するシラノール基と、弱い疎水性吸着を起こすシロキサンが存在します。
一方、ポリプロピレンの表面は電荷を持っていないため、イオン吸着は起こりませんが、比較的強い疎水性吸着が起こります。微量分析であるほど、この吸着の影響は相対的に大きくなりますので、注意が必要です。

 
解決法1:サンプルのpH調整
塩基性化合物の吸着は、ガラス表面のシラノール基との相互作用が原因です。
そのため、サンプルにギ酸やリン酸などを添加してシラノールの解離を抑える方法があります。
サンプルを酸性条件にしても問題がない場合に有効です。

 
解決法2:不活性処理済みのバイアルを使用
塩基性化合物の吸着を抑える方法として、ガラス表面のシラノール基をメチル基などに変換する不活性処理を施したバイアルを使用する方法があります。
不活性処理により、ガラスの表面は疎水性となり、極性の高い塩基性化合物などの吸着を抑えることができます。

 
解決法3:高品質ガラスのバイアルを使用
バイアルに使用されるホウケイ酸ガラスにはいくつかの品質グレードがあり、以下のような特徴があります。
・高品質なガラスほどシラノール基が少なく、親水性の高い塩基性化合物の吸着が抑えられる
・高品質なガラスほどアルカリ金属の含有量が少なく、ナトリウム等のアルカリ溶出が少ないためサンプルの
 pHシフトが起こりにくい。

SureSTARTバイアルではガラスの品質により3つのグレードに分けており、より厳密な分析を行う方はPerformance Level 3の製品を選択してください。
Performance Level 3の中でも高品質ガラスの製品は厳格な製造条件の下で表面を保護する最適温度で製造されており、表面活性が最小に抑えられています。

 
解決法4:樹脂バイアルを使用
ポリプロピレン等の樹脂製バイアルの場合、イオン性を持っていませんので塩基性化合物がイオン交換モードで吸着することはありません。
ただし、樹脂バイアルは疎水性吸着しやすい特性をもっていますので、高分子のタンパクなどは吸着されることがあります。
樹脂バイアルで疎水性吸着を起こす場合、表面を親水化して吸着を抑えたPPバイアルなどがありますので、ご検討ください。

バイアル選択のサポート

適切なバイアル選択は分析でのトラブル回避やコスト削減につながります。
しかし、サンプルの吸着などは実際に試してみないと判断できない場合があります。
装置との適合も実際にバイアルの実物を見て確認したいとのご要望も頂きますので、当社では無料試供品を用意しております。下記リンクよりお申込みください。

当社ではバイアル選定のサポートも行なっておりますので、ご不明な点などございましたらお気軽にお問い合わせください。