MonoSpinシリーズ トラブルシューティング/FAQ
1:MonoSpinシリーズをご使用になる上で、下記の点に注意してください。
- 実験方法は全て遠心操作で行ってください。
- 用いるサンプル溶液は浮遊物や、沈殿物、析出物が存在していないことを確認してください。もしこれらがある場合は、溶液を10,000×gで1分間遠心分離後、上清をサンプルとして用いてください。
- 本製品は使い捨てですので再使用できません。
- サンプル溶液とサンプルチューブ容量に注意してください。
- マイクロ遠心チューブを使用する際は、下記のサンプル容量を参考にしてください。
- 1.5mL容量遠心チューブ(回収用チューブ) サンプル溶液量 ~300μL
- 2.0mL容量遠心チューブ(廃液用チューブ) サンプル溶液量 ~800μL
- サンプルチューブ類が装置の蓋などに接触しないことを確認の上使用してください。
- 蓋を開けた状態で使用してください。
- 各遠心操作をふたを閉めた状態で行うと、スピンカラム内が陰圧になりスムーズに通液できません。
- 急激に回転速度が上昇する卓上遠心機をご使用の場合、300μL以上溶液を加えますと、溶液が飛び散る危険がありますので注意してください。
- 遠心加速度(回転速度)
- 1,000×g ~15,000×g (3,000rpm~13,000rpm)を目安にお使いください。遠心速度によって回収率が変化する場合があります。また、試料処理量によっては通液時間が長くなる場合がありますので、操作例を参考に、条件を最適化してください。
- 溶出液量
- 回収率が悪い場合には、溶出液量を増やしてください。 溶出液量を300μLまで増やしても充分な回収率が得られない場合は、溶出液の種類を再検討してください。 充分な回収率が得られている場合で、濃縮効率を高めたい場合は、回収率を確認しながら溶出液量を減らしてください。
2:各種官能基における注意点
C18
1.緩衝液(試料調整溶媒、コンディショニング溶媒、洗浄溶媒)のpH
塩基性物質を保持させるには、その物質の解離を抑えることが重要です。
試料調整溶媒のpHを、目的物質のpKaより高いpHにすると、充分に解離を抑えることができます。
2.緩衝液(試料調整溶媒、コンディショニング溶媒、洗浄溶媒)の有機溶媒濃度
上記の有機溶媒濃度が高すぎると、目的物質がカラムに保持されずにサンプルロード時や洗浄段階で溶出し、回収率が低くなることがあります。通常は、蒸留水や有機溶媒を含まない緩衝液を使用してください。クリーンアップ効率が悪い場合には、目的物質が溶出しない濃度で添加します。
3.分離目的物質の未溶出(カラムへの強い吸着)
分離目的物質がカラムに強く保持され、完全に溶出しない場合には、下記条件を検討してください。
1)シラノール基の解離を抑えるため、酸性条件にする。
塩基性試料の場合、シラノール基への吸着が考えられます。シラノールの解離を抑えることで溶出さ せます。有機溶媒に、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸を添加して溶出条件を検討してください。
2)より強い溶出溶媒にする。
目的物質を溶出するのに十分な有機溶媒濃度を有する溶媒/水、溶媒/緩衝液の組み合わせを選ぶか、使用する有機溶媒の種類変更を行ってください。
SCX、CBA
1.緩衝液(試料調整溶媒、コンディショニング溶媒、洗浄溶媒)のpH
塩基性物質を保持させるには、その物質が解離していることが必要です。
試料調整溶媒のpHを、目的物質のpKaより低いpHにすると充分に解離をすることができます。
*CBAの場合はpHが2.8以下になるとカルボキシル基の解離が抑制され保持ができなくなりますので、中性付近で充分に解離している化合物を目的物質として選んでください。
2.緩衝液(試料調整溶媒、コンディショニング溶媒、洗浄溶媒)の塩濃度
緩衝液の塩濃度が高すぎると、塩基性物質がカラムに保持されずにサンプルロード時や洗浄段階で溶出し、回収率が低くなることがあります。カラムのイオン交換能力を活かすために、緩衝液の塩濃度は20mM以下をお勧めします。
3.分離目的物質の未溶出(カラムへの強い吸着)
分離目的物質がカラムに強く保持され、完全に溶出しない場合には、下記の条件を検討してください。
1)分離目的物質の解離を抑えると溶出します。
SCXは強イオン性のため、イオン交換相の解離を抑えることができません。分離目的物質の解離を抑えることで、溶出を促進させます。例として、
・2~4%濃アンモニア水を含むメタノール
・アセトニトリル:トリエチルアミン:水 = 80:0.1:20
2)保持している分離目的物質より相対的選択性の高いカウンターイオンを流すと溶出します。
吸着物質がアミン系化合物の場合、0.2M以上のリン酸二水素カリウムなどを用い、溶出補助剤としてメタノールを適量添加します。
3)アミンまたはアンモニウム塩を流し、競合させながら溶出することができます。
溶出した後に濃縮乾固の操作が必要ない場合には、0.5M塩化アンモニウムを含む30%アセトニトリルを用いる ことができます。質量分析において、検出感度を上げるため濃縮乾固が必要な場合には上記1)の溶媒を用います。
4)担体の解離を抑えると溶出します(CBAの場合)
溶出時のpHを2.8以下にすることにより、カルボキシル基の解離を抑えることで、サンプルを溶出することが可能です。
溶出液例 塩酸:メタノール:水=1:30:69
SAX
1.緩衝液(試料調整溶媒、コンディショニング溶媒、洗浄溶媒)のpH
酸性物質を保持させるには、その物質が解離していることが必要です。
試料調整溶媒のpHを、目的物質のpKaより高いpHにすると充分に解離をすることができます。
2.緩衝液(試料調整溶媒、コンディショニング溶媒、洗浄溶媒)の塩濃度
緩衝液の塩濃度が高すぎると、酸性物質がカラムに保持されずにサンプルロード時や洗浄段階で溶出し、回収率が低くなることがあります。カラムのイオン交換能力を活かすために、緩衝液の塩濃度は20 mM以下をお薦めします。
3.分離目的物質の未溶出(カラムへの強い吸着)
分離目的物質がカラムに強く保持され、完全に溶出しない場合には、下記の条件を検討してください。
1)分離目的物質の解離を抑えると溶出します。
SAXは強イオン性のため、イオン交換相の解離を抑えることができません。分離目的物質の解離を抑えることで、溶出を促進させます。例として、
・0.001N以上の塩酸を含むメタノール
・0.07Mリン酸を含むメタノール
・1~5%ギ酸を含むメタノール
(カラム溶出後、濃縮乾固する場合は揮発性の酸を含む溶出液を使用することをお薦めします。)
2)保持している分離目的物質より相対的選択性の高いカウンターイオンを流すと溶出します。
SAXに対するカウンターイオンの選択性の強さ
OH- < CH33COO- < HPO4- < HCO3-, Cl- < SO42-
3)イオン強度を上げると溶出することができます。
緩衝液中の陰イオンを高濃度にすると(>0.1 M)、それらが固相に対して分離目的物質と競合し、カラム からの溶出が促進されます。
例) 0.5 M塩化ナトリウム : アセトニトリル = 80 : 20
NH2, Amide(ヒリックモードでの使用)の場合
1.緩衝液(試料調整溶媒、コンディショニング溶媒、洗浄溶媒)中の有機溶媒濃度
有機溶媒濃度が低すぎると、目的物質がカラムに保持されずにサンプルロード、洗浄段階で溶出し、回収率が低くなることがあります。通常は、90%以上のアセトニトリルを用いてください。サンプルが水などに溶解している場合は、アセトニトリル終濃度が90%以上になるように溶解するか、一度溶液を乾固後に、90%アセトニトリル水溶液で再溶解してください。クリーンアップ効率が低い場合には、目的物質が溶出しない濃度で水を添加します。
2.分離目的物質の未溶出(カラムへの強い吸着)
分離目的物質がカラムに強く保持され、完全に溶出しない場合は、クエン酸アンモニウムやアンモニア水を加えると溶媒pHが塩基性(>pH 8)になることで溶出が容易になる場合があります。
例:10mMクエン酸アンモニウムin 75% アセトニトリル水溶液
PBA
1.サンプルのpHはアルカリ性になるように調整してください。
ボロン酸担体によってサンプルを吸着するにはまず、担体上でボロネートアニオンを形成する必要があります。そのため、溶液が中性、酸性条件下では、ボネートアニオンが安定に形成できず、ターゲットに対して強い親和性が得られません。一方でカテコールアミンなどのサンプルはアルカリ条件で不安定ですので、サンプル調整後なるべく早くカラムで精製してください。各サンプル精製における推奨pHを記載します。
・カテコールアミン:サンプル溶液のpHが8~8.5になるように調整
・糖:サンプル溶液のpHが11~12になるように調整
2.緩衝液としてはTris-HClなどのアミン系の緩衝液は使用できません。
トリスなどのアミン系の緩衝液は、トリスそのものがボロン酸に対して親和性を示します。そのため、サンプルの吸着を阻害するため使用できません。緩衝液としては、リン酸緩衝液やHEPES,MES等アミン系以外の緩衝液を使用して下さい。
3.カテコールアミン代謝物の一部は保持できません。
ボロン酸担体は対象分子内のシスジオールを認識しますので、分子内にシスジオールがない分子は保持しません。そのため、バニルマンデル酸やホモバニリン酸などは保持できません。
TiO
1.緩衝液(試料調整溶媒、コンディショニング溶媒、洗浄溶媒)中のpH、有機溶媒濃度
酸性条件下のほうが、吸着が強くなります。目的物質が漏えいしない程度の有機溶媒を添加しての使用も可能です。
2.分離目的物質の未溶出(カラムへの強い吸着)
分離目的物質がカラムに強く保持され、完全に溶出しない場合には、下記の条件を検討してください。
1)アンモニア水のアンモニア濃度を上げる。
5%までアンモニア濃度を上げ、溶出力を強くします。
2)ピロリジン水溶液で溶出させる。
溶出液として5%ピロリジン水溶液を用います。
Trypsin
1.サンプル溶液の調整
迅速消化を行うためのサンプル調整として、還元アルキル化後のタンパク質を試料として用いてください。
2.変性剤濃度、有機溶媒濃度
トリプシンの活性を保つため、変性剤濃度、有機溶媒濃度はなるべく低い濃度でご使用ください。
使用可能な範囲例 2M尿素
3.消化効率を上げる方法
回転数を下げ、通液スピードを遅くする。カラムへのアプライ回数を増やすなどの検討を行ってください。