分取の上手な使い方
Ⅰ章-2 分取の例
分取HPLCを使用する例として、次のようなものがあげられます。
天然物からの抽出
天然物の有効成分が特定できている場合、多くの成分の中から有効成分のみを精製します。この場合は、mg~gオーダーでの分取が一般的です。
多くの成分から、目的成分のみを分取して、夾雑成分と分離します。この場合は、5µm程度の分離の得られるカラムを使用することをお薦めします。
有効成分の特定のための分取
天然物などには多くの成分が含まれており、その中の有効成分が不明な場合など、溶出する成分を全て分取して、NMRやLC/MSなどの分析装置で解析する場合に用います。この場合は、µg~mgオーダーでの分取が一般的です。
番号は分取した部分を示しています。これは、溶出量(10mL)ごとに分取した例になります。一定時間や容量ごとに分取します。この場合は、5µm程度の分離の得られるカラムを使用することをお薦めします。
合成物の精製①(GPCクリーンアップ)
合成物の純度を上げるために、分取HPLCで精製します。
農作物中や畜産物中に残留する農薬などを分析する場合、色素や油脂成分などの妨害成分を分取HPLC(GPCクリーンアップ法)で除去します。この場合の分取量は、分取した成分の使用目的に応じてµg~kgと広い範囲で選択します。
主成分と不純物を分離し分取することで主成分の純度をあげます。この場合は、主成分と不純物の分離がどの程度得られているかによって、カラムの粒子径は変わってきます。不純物のピークが多い場合や、充分な分離が得られない場合は、粒子径5µm程度のカラムを使用することをお薦めします。充分な分離が得られる場合は、10µm以上の低圧力のカラムを使用することをお薦めします。
合成物の精製②
目的成分が合成により得られているかを精製、分取して確認するために使用します。サイズ排除クロマトグラフィー (SEC) がよく用いられており、リサイクル分離も活用されています。mg~gオーダーでの分取が一般的です。
目的成分がどれくらいの収量で合成できているか確認します。また、分取を行い、同定や解析を行います。SEC ではカラム 1本での高分離が得られ難いため、カラムを連結したり、リサイクル分離が使用されます。
合成物の不純物特定のための分取
合成品に含まれる不純物を分取し、不純物をNMRなどの分析装置で解析する場合に用います。
合成物の精製とは違い、不純物の特定のために分取します。この場合も、主成分と不純物の分離がどの程度得られているかによって、カラムの粒子径は変わってきます。不純物のピークが多い場合や、充分な分離が得られない場合は、粒子径5µm程度のカラムを使用することをお薦めします。充分な分離が得られる場合は、10µm以上の低圧力のカラムを使用することをお薦めします。