技術情報

誘導体化試薬の使用例

Ⅱ章-2 アシル化剤-1

アシル化は次のような大きな利点をもつことから、クロマトグラフィーのための誘導体化法として広く用いられています。
第一の理由として、アミノ基、水酸基、チオール基など吸着しやすい官能基の極性を弱めるため、クロマトグラフィーにおける分離を改善する効果があります。
第二の理由としては、アシル化によって不安定な官能基を保護することで安定性を向上させる効果もあります。
第三の理由としては、多くの極性基を持つ不揮発性の化合物( 例えば炭水化物やアミノ酸) に対して、アシル化することによって揮発性化合物にすることができるためです。このことにより炭水化物やアミノ酸などの化合物もガスクロマトグラフィーで分析が可能になります。
最後の理由としては、ECD のような高選択性の検出器に適したハロゲン含有のアシル基を持つ化合物に誘導体化することによって、非常に低レベルを検出することができるようになるからです。

無水フルオロアシル化剤

無水フルオロアシル化剤は、GC分析やMS分析のためのフルオロアシル誘導体を調製するのに広く用いられています。
FID、ECDのどちらの検出器に対しても優れた感度を示します。
これらの試薬のみでも反応は充分進みますが、反応副生成物として酸ができますので、その受容体としてトリメチルアミン、トリエチルアミンなどの塩基性化合物を併用したほうが効果的です。

N-アシルイミダゾール

フルオロアシルイミダゾールは、無水フルオロアシル化剤を使用した時にできる酸(試料の酸加水分解を引き起こす原因となる)を生成することなく、アミン、アミド、アルコール、フェノールなどをフルオロアシル化できる大きな特長があります。とくに一級アミンや二級アミンに適しています。光と水分に影響されやすいので、保存には注意してください。

その他のアシル化剤

MBTFAはおだやかな条件で一級アミン、二級アミン、‐OH、‐SHなどをトリフルオロアセチル化します。反応副生成物は中性で揮発性も高く、分析の妨害にはなりません。
アミンとの反応は迅速かつ定量的に進みますが、‐OHや‐SHとの反応は比較的ゆっくり進みます。
PFBエステルはECDに対して感度が高く、脂肪酸、フェノール、メルカプタンなどの分析に有効です。