HPLCの上手な使い方
Ⅲ章-9 インジェクター
HPLCで使われるインジェクターには手動のものと自動のものがあり、ルーチン分析を行っているところではオートインジェクターが使われるようになってきましたが、まだまだ手動式のものが多く使われています。ここでは最も広く使われているRheodyne製インジェクターについて、使用上の注意点を説明します。
構造
下図にRheodyne7125の構造を示します。1番(ステーターに刻印の数字がある)と4番をつないでいるのがサンプルループ(標準は20µL)です。そして2番にポンプ、3番にカラムを接続し、5、6番に付属のドレインチューブを接続します。サンプルの注入は、まずLOADの状態でマイクロシリンジによりサンプルを注入するとローターシール、ステーターを通って4番からサンプルループに導入されます。その後INJECT状態にすると流路が切り換わりポンプとカラムの間にサンプルループが入ります。そしてサンプルはループから4番、3番を通ってカラムに送り込まれます。
注入操作
STEP1
サンプルをはかり取ったシリンジを、INJECT状態で注入ポートの奥まで差し込み、バルブを素早くLOAD状態に切り換えます。
STEP2
シリンジのサンプルをゆっくり押し出し、シリンジを抜かずにバルブを素早くINJECT状態に切り換えます。
STEP3
シリンジを抜き取り、つぎのサンプルを注入するまでバルブは動かしません。
STEP4
洗浄液をシリンジに適当量取り、バルブはINJECT状態のまま洗浄液を押し出します。
サンプルを注入する方法にはループの全量注入する方法と部分注入する方法があります。前者は再現性のよい注入方法(ループ容量の4~5倍量注入する)ですが、ループを交換しないと注入量を変えられません。後者はシリンジの計量誤差が再現性に影響を与えますが、ループ容量を最大とした範囲で注入量を任意に変えられるので最も一般的に使われている方法です。
ゴーストピークの原因
HPLCの分析において、ゴーストピークがでる、再現性が悪い、検量線が直線に乗らない などのトラブルがあります。その原因の一つとして、インジェクターの使用法が 不適切な場合があります。 ①は注入操作(上記)のSTEP2が終了した段階のニードルポートです。 次の分析を行うためにはシリンジを引き抜く必要がありますが、この時、ポート内における針先が 存在していた空間に、針先に残ったサンプルや洗浄液などが残ります(②)。 ここで、改めてシリンジを差し込む際に、一般に行われているようにSTEP1を省略して STEP2のLOAD状態になってからシリンジを差し込んだ場合を考えます。 すると、③ のように残存溶液がループに押し込まれてしまい、ゴーストピーク等の原因になります。 しかし一方、STEP1のようにINJECT状態でシリンジを差し込むと、押し込まれた残存溶液は ループではなくドレインへ排出されます。
ニードルポートの洗浄
通常は前記のような注入法で問題ありません。しかし注入サンプルを変えるときにはシリンジを洗浄するのはもちろんですが、インジェクターのニードルポートも洗浄する必要があります。その場合は左図のようにインジェクターをINJECTの状態で、付属のニードルポートクリーナーを適当な注射筒(5mL程度)に接続して溶離液でニードルポートを洗浄してください。
ドレインチューブの位置
良い例
ドレインチューブの出口の高さは左図のようにインジェクターの注入ポートの高さと同じレベルにしてください。ドレイン口のレベルが注入ポートより高いと、液が逆流して注入ポートから漏れ出します。また逆に低いとドレイン口へ抜けてしまうので、サンプルループにエアーが入ってしまいます。
レオダイン製インジェクターの種類
モデル
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特長および用途
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7125
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最も一般的なタイプのインジェクターで、世界中で幅広く使用されています。オプションのポジションセンシングスイッチを取り付ければ、インジェクトと同時に外部装置へ信号が送れます。
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8125
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内部のデットボリュームが7125より少ないため、少量のサンプル注入が可能です。また、ポジションセンシングスイッチも内蔵されています。
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9125
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接液部の材質がPEEKとテフゼルであるため、金属との接触を避けたい分析時に有効です。ポジションセンシングスイッチも内蔵されています。
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7520
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ローター内部にループが組み込まれている(下図参照)ため、極微量のサンプル注入時に使用します。レオダイン製インジェクターの中でサンプル注入量が最も少ないタイプです。
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7725
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基本的には7125と同じですが、バルブ切換時に流路が閉ざされない機能(下図参照)が補足されたため、分析カラムへの圧力ショックがかかりにくくなっています。また、ポジションセンシングスイッチ内蔵タイプ(7725i)や2µLの内部ループ(オプション)も用意されています。
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耐圧性・対薬品性
耐圧に関しては、出荷時の標準状態では350kg/cm2ですが、調整することによって490kg/cm2(モデル9125を除く)まで上げられます。耐薬品性については、モデル9125ではpH14まで使用可能ですが、その他のモデルではシール材質がポリイミドであるため、pH10までしか使用できません。より高いpHで使用する際にはローターシールをテフゼル製のものに換えてください。またモデル7125に限り、接続部にチタンを使用した製品(7125-081)も用意されていますので、バイオ関連の分析などにご利用ください。
切換バルブについて
HPLCの分析手法として、分析ライン中の任意の位置にバルブを設置することによって、カラムや流路を切り換えたりする方法があります。この時に使用する切換バルブ(レオダイン)の代表的なものを以下に示します。
MODEL 7000 | MODEL 7030 | |
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用途 | 2本のカラム選択や2方向の流路切換が行えます。 | 2連の3方バルブによってカラム選択やサンプル精製を行います。 |
応用例 |
MODEL 7060 | MODEL 7067 | |
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用途 | 6方向の流路の中から任意の流路を選択できるバルブで、2~5本のカラム選択が行えます。 | 2個の7000が自動バルブ切換器に組み込まれているため、複雑なサンプル濃縮などが可能です。 |
応用例 |
レオダイン リペアサービスのご案内
レオダインバルブにはローターシールのように使用しているうちに消耗する部品がありますし、ときには修理を必要とするトラブルが発生することもあります。そのような場合の点検・部品交換・修理・調整・検査を行います。標準納期は、お客様よりサービス係へ品物が届いてから48時間以内に発送しますので、ぜひ利用してください。
インジェクター使用のポイント
バルブの切り換えは素早く。
カラムのダメージを防ぐ。
専用のシリンジを使う。
ローターシールの損傷防止。
全量注入の場合は、ループ容量の4~5倍量注入する。
再現性を良くする。
部分注入する場合は、注入量の2倍程度のループを付ける。
ループ内の拡散をできるだけ防ぐ。
pH=10以上で使うときは、ローターシールをテフゼル製にする。
インジェクターのドレインチューブの出口は、注入ポートの高さに合わせる。
コンタミネーションやエアーの混入を防ぐ。
故障のときはリペアーサービス。
48時間以内に返送します。